ダイエットを扱った関西テレビ「捏造番組」と視聴率競争

 ダイエットを扱った1月20日、フジテレビ系関西テレビが「発掘!あるある大事典Ⅱ」(食べてヤセる!!!食材Xの新事実)という番組でデータの捏造があったことを認め、謝罪するという“事件”が発生した。

『週刊朝日』のスクープだった。「スーパーから納豆が消える」という珍現象を究明する中で容易に異常が発覚したようだ。

健康、ダイエットは怪しい領域

 健康をテーマとした番組は少なくない。「おもいッきりテレビ」(日本テレビ)はその先がけで、ここで取り上げられる健康食品・製品は必ず、放送後スーパーなどで人気が出るために、バイヤーはこれをみこして仕入れたりする。

これは今に始まったことではない。「はなまるマーケット」(TBS)もNHK「生活ほっとモーニング」も、主婦向けに同様の健康をテーマとした番組を制作してきており、つまり、今回の問題は、「関西テレビ」だけの問題とは言い切れない。

 もうひとつ、健康食品という視点のほかに、「ダイエット」が今回の番組の大きなポイントだった。ダイエットは、とりわけ、テレビ局がいちばん欲しいF1層(20歳~34歳の女性視聴者)をはじめとして、女性にとっての主要な関心事のひとつ。

だからこのテーマの番組は非常に多く、注目を集めるために無理をしがちな領域だ。

 例えば、地上波深夜番組でもいつの間にか各局が通販番組を放送するようになった。主要な商品のひとつがダイエット関連商品だ。

また、BSデジタル放送では通販番組が“お米”になっているし、CS放送ではショッピングチャンネルが大人気である。

もし、納豆がダイエットに効くというデータが捏造だったとすれば、そのほかのダイエット関連商品も無批判に受け入れるのはどうだろうか。

 今や通販ビジネスは、インターネットの普及も絡んで「ダイレクトマーケティング」の新たな潮流として広告代理店の熱い視線を浴び、単品リピート商品を売る中小・中堅企業からナショナルスポンサーにまで普及し始めている。

具体的には「酢」(の代表)があるが……。番組編成と視聴率 「発掘!あるある大事典Ⅱ」は、日曜日の午後9時~9時54分の放送だった。

この時間帯は、裏に日本テレビの「行列のできる法律相談所」、TBS「華麗なる一族」(木村拓哉主演)という2つの高視聴率番組が編成されている枠だ。

1月7日は正月編成の影響で、両方の番組がなかった。そこで、なんとか20%を確保してさらに番組に勢いをつけようと当該番組制作者は無理をした(実際は14.5%だった)。

 ところでこの人気番組は、関西テレビから2人、元受会社日本テレワーク(フジテレビと昔から関係が深い)から4人のプロデューサーが参加していたが、実際は、AJITO、SSSystem、オン・エアー、JUMP、D:COMPLEX、D組プロジェクト、トスプランニング、NET WEB、NON PRODUCTIONという9つの孫受けプロダクションが制作をしており、この中の某プロダクションの制作スタッフが捏造を行った。

 制作費は下請けに出されるたびにピンハネされて少なくなる。しかも視聴率は要求される。安い制作費で数字を稼ぐプロダクションが重宝されて生き残ることができるのである。

こうした中、キー局や準キー局の社員は高給取りだが、プロダクションの社員の待遇はいっこうに改善されず、3K職場。捏造ややらせを生む土壌は依然として改善されていない。

 かつて、フジテレビは月曜午後7時に「愛する二人 別れる二人」(1998年10月18日から1999年11月8日まで)という番組でやらせ事件を起こした。

みのもんたがMCで、番組内で夫婦がののしりあいをし、離婚届に印鑑をおすパフォーマンスで20%を取った。

長年一桁で苦しんでいたこの枠が20%を取ったことで、その後の月9のドラマ、「SMAP×SMAP」の視聴率も急上昇し、これが全体のタイムテーブルに好影響を与え、日本テレビを追撃する流れができたかに見えたときに、実は公募したはずの夫婦が仕込みだったことが分かり、打ち切りに。

制作したのは、安い制作費で数字を取ることで知られた「ジャパンPRODUCE」という制作会社だった。捏造・やらせは、視聴率概念の変換なしにはなくならない。

 私は、量のデータのみならず、視聴質の数値化の研究と業界でのオーソライズ、視聴率との総合評価で、新たなビジネスモデルを構築することが必要だという持論を持つが、視聴質(満足度など)の研究は、マーケティングデータのダブルスタンダードで業界を混乱させるという観点から進展していない。 

ちなみに、「あるある」の捏造の実態は、1月21日の新聞各紙の報道によれば、

○納豆を食べた被験者の中性脂肪値が正常値になったとコメントしたが、実際は測定しておらず、架空の数字をつけて紹介。
○米国のダイエット研究として紹介した内容は別の大学教授の研究だった。
○米国の大学教授の発言として日本語訳で紹介したコメントは実際は発言していなかった。
○被験者から血液を採取したが検査はしていなかった。

 というものだった。制作会社としては、1月7日の放送に間に合わなければ意味がないために、時間が無い中で追い詰められてつじつまを合わせるべく捏造を行ったものだろう。

その後の調査で1998年10月25日放送の「徹底検証・快眠のためのマル秘テクニック」でレタスの催眠効果についても捏造があったことが判明。捏造は恒常的に行われ、そのことに麻痺していた実態が浮き彫りになりつつある。

JanJan - 2007/2/6